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042: 「ラグビーやってよかった」と思える4年間を【前編】(S37 三好 郁朗・H2 溝口 正人 師弟監督対談)

更新日:2022年2月17日

 師弟と呼ぶにふさわしい新旧の監督が、自身のラグビー観や監督像について、思いのたけを語り合った。学生の自主性と「楽しむ」ことを重んじるなど、多くの共通項が浮かび上がった。



二人の関係


(溝口)現役4回生でキャプテンの時に、三好先生が2度目の監督に就任された。ちょうどCリーグに転落した時で、三好先生が我々にとっては目新しいラグビーを導入され、充実した1年間を過ごし、Bリーグに昇格して卒業できた。まったく頭が上がりません。



三好監督から学んだラグビーとは。今も心に残っている言葉、戦術、練習

(溝口)主将で、グラウンド以外でもミーティングをしていたが、どれほど先生のおっしゃりたいことを理解していたかというと、ほとんどできていなかった。今、監督をやっていて、今頃になってわかってきている気がする。

印象的だったのは、三つある。一つは、BKがオープンに展開してトライをとる、ということだが、当時そんなに簡単に取れることはなかった。春から鞭がしなるようなラインができるように練習を重ねた。春シーズンで上位チームに通用し、今では体に染みついている。

二つ目はFWのセットプレーが面白かった。ラインアウトで当時はどのチームもまだやっていなかったリフティングを海外からいち早く導入した。目からうろこだった。

三つ目は、ただの根性練習は必要ない、とはっきりとおっしゃったこと。それでもトータルではかなりの量を走ったと思う。

(三好)体を鍛える練習と、技術を磨く練習を一緒にやるのは無理。留学したフランスでは、体力トレーニングはほとんどやらない。それは自分でやって、チームではチームとして技術を磨く練習をする。


(溝口)大事なことは昔も今も、そんなに変わっていない。80分間、次の展開を予測してどれだけの選手が動けるか。タックルのないラグビーでは勝てない。はやりのラグビーはあるが、それをやるための技術は変わらない。我々が学生時代に教わったことが基本にあって、その上に今のチームや体格に合ったラグビーがある、ということだろう。私は新しい物好きに見られがちだが、意外と基本重視。あとは学生が自分たちで考えて面白い化学反応が起こればいいと思っている。


(三好)15人という多人数で戦うラグビーで、京大は決してトップレベルの選手がそろうわけではない。上のレベルの選手は自分で伸びてほしいが、一方でチームにうまく溶け込ませる必要がある。また、下のレベルをどこまで引き上げられるかが大きな課題だ。それには基礎的な練習しかないが、そればっかりでは面白くない。それぞれのレベルに応じて面白さを味わうこともある程度、やらないといけない。レベルの違う選手たちをいかにまとめ、一番高いレベルに近づけていくかが、京大のようなチームの監督の仕事だろう。


(溝口)現状では、関西のA、B、Cリーグの差が自分の現役時代よりも少し開いている。Aリーグだと強化、何よりリクルートに力を入れている。人数も100人いないチームはない。かたや、下の方だと15人そろわない。格差は開いていると感じる。

全国からいい選手を集めても、そこには真の面白さはないと思っている。努力して、上のチームを食う。それを選手たちと一緒にやりたい、という思いがある。相手を圧倒するような試合はできない。びっくりするぐらい競ったゲームをして、相手が焦ってミスして、うちがいいプレーが重なって勝てる、というレベルだが、あり得ると信じてやっている。


(三好)今は高校での経験者がほとんどでしょ? 昔は半分ぐらいが未経験者だった。そういう選手が「ラグビーをやってよかった」と思って卒業してもらわないといけない。逆に言うと、トップのレベルのラグビーをやったわけじゃない。学校のスポーツというのは、どこかでそういうところと結びついていないと意味がない。当時は、上のチームでも、頑張れば何とか手が届くぐらいのレベルだった。今はかなりレベルが上がっているから、大変だと思う。


▼三好 郁朗・溝口 正人 師弟督対談動画その1はこちら↓

(2021年6月6日収録@京都大学宇治グラウンド・クラブハウスにて)

取材:奥村健一(H2/LO、読売新聞)、山口泰典(H4/No. 8、読売新聞)、但馬晋二(H24/ FL、読売テレビ)




▼三好郁朗さんのプロフィール

1939年生まれ。1980~82年と89~92年の2度にわたり京大ラグビー部監督。京都大学名誉教授(フランス文学)。京大文学部卒、64年にフランス政府給費留学生(パリ大学)。京都大学総合人間学部長、副学長、京都嵯峨芸術大学学長を歴任。フランス政府教育功労賞受賞。2015年秋に瑞宝中綬章を受章。


▼溝口正人さんのプロフィール

1966年、神戸市生まれ。1990年京都大学農学部農林経済学科卒、(株)リクルートコスモス入社。現在は(株)ビケンテクノ取締役として、都市開発事業を中心とする不動産事業全般に従事。ラグビーは中学3年の夏に同級生と見よう見真似で始め、兵庫県立神戸高校、京都大学で主将。高校3年時はオール兵庫でも主将を務めた。京大では一回生からレギュラー。2016年のCリーグ降格を機に翌2017年、監督就任。学生の自主性に任せつつ明るい雰囲気を醸してAリーグ昇格を目指す。



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