"To The NEXT 100 Yrs" 次の100年へ。
《特別インタビュー》
大学選手権の対戦相手として、夏合宿の地・新日鐵釜石のスター選手として、定期戦の相手の監督として、おりおりに京大を見てきた松尾雄治さんに、京大の印象や期待することを聞いた。
――成城の監督時代、定期戦で京大のラグビーを見ていて、印象に残ったことは
京都大学と(学生時代に対戦した)東京大学はとても似ている。お世辞じゃなくて、ラグビーに取り組む姿勢がまじめだ。時間もないのに一生懸命ラグビーをやってる姿はとても印象的だ。成城の監督になったときに『向こうはみんな勉強してるんだぞ。毎日君らの何倍も勉強して、残された時間でラグビーをやっている。強い弱いでなく、昔風に言うと真のラガーマンというかスポーツマンというか、そういう人たちもいるんだよ』と話したことを覚えている。
「勝つとか負けるとかだけではなくて、運動にまじめに取り組むという、その姿勢が大切なんだ」という話を(成城の学生に)した。技術的には(劣っていても)しょうがない。ぼくの高校時代なんか本当に学校にいかないんだから。そういうラグビー部とは異質なものなんだ。
――ラグビーの知性と試験勉強の知性の違いは
(ラグビーは)理屈じゃない。理屈でやれるんなら全部東大と京大が勝っちゃう。強くなっていくチームは、みんなでどうしようか、ということを考えるし、考えるよりも体を動かすということもある。その違いが京大と成城の違いだった。ラグビーのレベルの違いは、それにどれほどの時間を割いてきたかという時間の違いだ。国立大学でプロ野球の選手になる人はまずいない。それに懸けている時間が違う。
――1974年の大学選手権で京大は明治と対戦(6-58)。この時の水田和彦主将が「ラグビーに取り組んできた時間の差、強豪校との試合経験の差など、乗り越えるべき壁は高い」などと回想している
京大をよいしょするわけじゃなくて、58点で止まったというのは、彼らは必死になってタックルしたということだ。東大とか京大とかと試合やると痛いんだよ。もう諦めてくれよ、と言いたいんだが。頭からガーンとくる。運動神経があるやつ同士だとスパッと抜けるんだけど、俺がステップ切ったのも関係なくゴーンと真っすぐ来る。技量は追いついてないけど「俺は止めるぞ」という気持ちだけはものすごく感じたことを今でも覚えている。タックルにうまい下手はない。勇気をもって行くしかない。そういうことには一生懸命だというのが京都大学の印象だ。
――(強豪校に)勝とうなどとはおこがましいのだろうか
運動とは別に、教育というか、グラウンドへ行った時の所作というものがある。相撲でもなんでも、一礼するとか、勝った時の所作とかがある。そういうこともラグビーの中に必ずあると思う。プロになると、見ている人が楽しければいい。トライしたら万歳したり、ボール投げたり、何してもいい。けど大学生は忘れてはいけないことがある。昔、ボールの上に座ったりしたら、ぶん殴られた。そういうこと(マナー)をリードしてきたのが京大であり、東大、慶応だった。そういうことに関しては、京都大学というのはものすごくラグビー界を引っ張ってきた、と思ってもらっていいのではないか。礼に始まり、礼に終わるようなことがなくなってはいけない。これからも京都大学や国立の大学には(そういうことを)お願いしたい。
▼元日本代表・松尾雄治さんの「京大・東大ラグビー部に期待すること」動画はこちら(約9分)
(2021年4月13日「リビング」にて収録)
取材:白石良多(S54/WTB)/真田正明(S55/PR)/西尾仁志(H2/CTB)
▼松尾雄治さんのプロフィール
1954年東京都生まれ。成城学園中学校、目黒高校、明治大学、新日鐵釜石。目黒高校のときに全国優勝。大学2年生でスクラムハーフからスタンドオフに転じ、4年生のときに大学選手権に優勝、日本選手権も初優勝。新日鐵釜石ではV7を含む8回の日本選手権優勝に貢献する。日本代表キャップ24.
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