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083: 限界を越えさせてくれたもの〜BREAK THE LIMIT(H21 森田 暢謙)


東大定期戦終了後、メンバーで記念写真

チーム始動〜不安と期待〜


2008年度、チームの主将を任されたとき、大きな不安と重圧を感じました。2007年度、当時の平成史上最高の成績を修め、京大の強さを支えた飯島組がごっそりと引退し、残ったFWのレギュラーメンバーはわずか2人。変わってメンバー入りしたのは、1年間を通してB戦で全敗した発展途上の若いFWでした。常識で考えれば、1勝することすら難しい弱小チーム。目指すチーム像について、同期とミーティングを重ねる中で、自分たちの代で今まで成し得なかったBリーグ優勝を成し遂げたいという気持ちと、本当にそんなことができるのかという不安が錯綜していました。一方で、このような時に最高学年を迎えられることに大きなやりがいを感じていました。誰もが不可能だと思っていることを実現するという大きな目標へのチャレンジを通して、仲間と一緒に大きく成長し、自身の限界を越えることを楽しみたいという気持ちから、“BREAK THE LIMIT”というスローガンを立てました。納会では、「誰もが弱いと思っているこのチームが優勝することほど面白いことはない。この1年に全てを賭けたい。」と初心表明を行いました。後輩たちに向けて色々な伝えたい思いがありましたが感極まって泣いてしまい、まともに喋れなかったことをよく覚えています。




春シーズン〜仲間の熱い想いと手応え〜


春シーズンが始まる頃には、不安よりも期待感が勝っていました。前年にも増す同期、そして後輩たちの勝ちたいという熱い想いを感じることができたためです。シーズンオフの期間から、自主的に筋トレ・練習に打ち込むチームメイトの姿を見て、これだけの熱量があれば、このチームは必ず化けると確信しました。同期とのミーティングの数は計り知れず、深夜にまで渡ってミーティングを続けることも多々あり、お互いの意見をぶつけあった時間は非常に価値のあることでした。例年よりも負荷の高い高密度な練習メニューを消化しながら迎えた春シーズン初戦、関西学院大との定期戦で100点以上の点差で大敗を喫したものの、試合を重ねる毎にチームは目を見張るような成長を遂げました。国際親善試合の英国エジンバラ戦ではフィジカルではなくボール運びで勝負をする彼らのスタイルに直に触れたことは、自分たちのプレーに大きな影響を与え、ボールを早く展開するスタイルの礎となりました。最終戦では、過去3年間で1度も勝つことのできなかった、外国人留学生を擁する花園大学にも勝利を修めました。

春シーズンの定期戦。京大 VS 立命館大(京大 33−52 立命大)
同上
春シーズンの定期戦、京大 VS 防衛大(京大 31−17 防衛大)
同上

エディンバラ大との国際親善試合(京大 21−52 エディンバラ)




夏〜チームの躍進〜


夏合宿の戦績でリーグ戦の戦績がある程度分かると考えていたため、合宿へ行くことが非常に怖かったことを記憶しています。その気持ちを払拭するために、練習ではタックルを繰り返しました。ボールキャリアーの追い詰め方、足の踏み込み方、タックルをする肩の使い方等、プレーの細部まで徹底的に拘りました。チームの基本戦略の確立を夏合宿での目標とし、戦略を意識した練習やミーティングを増やしました。そして迎えた夏合宿。自分の心配を吹き飛ばすかのようにAチームは5勝1敗という好成績を残すことができました。攻撃的なディフェンスから早い展開ラグビーで得点するという自分たちのスタイルを確立させ、着実にチーム力が向上していることを実感しました。副キャプテンの今井(LO)が試合中に眼底骨折をし、一時はどうなることかと思いましたが、術後に驚異的な回復を見せリーグ戦に間に合わせてくれました。





リーグ戦〜限界を越えさせてくれたもの〜


開幕から4連勝。一見、順調な滑り出しでしたが、チームの内部事情は異なっていました。負けられないことへのプレッシャーから、チャレンジングなプレーが減り、できていない部分にばかり目が行くようになっていました。チームは萎縮し、大切にしてきた自分たちの強みや仲間への信頼、チームへの思いもバラバラになり、5戦目の関西大戦で初黒星。続く大阪産業大戦でも大敗。チーム始動から順調に来ていただけに、悔しさと不甲斐なさで私自身、非常に落ち込み、築き上げた自信が崩れていきました。キャプテンとして自分がすべきことを悩み、考えましたが、1人では解決できず苦しみました。その時に支えてくれたのは、監督・コーチそしてチームの仲間でした。ある日の練習後にグランドの脇で輪になって集まり、学年に関係なくそれぞれが胸の内を明かしました。チームへの不満、このまま負け続けてしまうのではないかという不安、満足できるプレーができていないという自責等、様々な議論が持ち上がりました。話し合う中で、勝敗に拘るあまり、今まで培ってきた自分たちのラグビーの良さを全く出せていない、楽しめていないということに気付くことができました。できていないプレーを責めるのではなく、いいプレーを褒めて盛り上げる。仲間のミスは自分がプレーでカバーする。試合に出られない仲間のために、体を張って前に出る。今まで当たり前に、大切にしていたことが、リーグ戦という負けることができないことへのプレッシャーでできなくなっていました。竹森元コーチからも、「京大が春から比較して、飛躍的にチームが伸びたことは明白であり、全力を発揮した試合を恥じることはない。それでも勝てない悔しさは次のゲームに向けてぶつけるものであり、チームは前進している。まだリーグ戦は終わっていない。」と激励を受け、失敗を恐れずに、もう一度チームを立て直そうとチームが一つになり、最終節を迎えました。


左)リーグ戦・第一節 京大 vs 大阪教育大学(京大34−0 大教大)

右)リーグ戦・第二節 京大 vs 帝塚山大学(京大 24−5 帝塚山)  


左上)リーグ戦・第三節 京大 vs 大阪経済大学(京大33 − 27 大経大)

右上・左下・右下)リーグ戦・第四節 京大 vs 神戸大学(京大 33−32 神戸大)


上段)中段左)リーグ戦・第五節 京大 vs 関西大学(京大 14−39 関西大)

中段右)下段)リーグ戦・第七節 京大 vs 甲南大学(京大 30−22 甲南大)



甲南大に辛勝。続く龍谷大には大敗したものの、自分達の強みである攻撃的なディフェンスと一瞬の隙をつく集中力のある攻撃から得点を重ね、リーグ首位の龍谷大から最多得点を奪うことができました。最終戦となった花園大戦、試合前日のメンバー発表では多くのメンバーが涙を流しながら決意表明しました。ゲーム当日、キックオフとともに京大は愚直なタックルと運動量で花園大を圧倒。倒されても何度でも素早く起き上がり、またタックルに行く。チーム全員の思いが一つになった試合でした。最後は追い上げられるも9点のリードでノーサイド。ゲーム終了後、ベンチのBチームを引っ張ってきてくれた同期の涙を見たとき、今までラグビーをしてきて本当に良かったと心から思いました。何物にも代えられない最高の思い出です。苦しみを共に乗り越え、チームが“BREAK THE LIMIT”できたゲームでした。


▼2008年度森田組・リーグ戦最終節/京大 vs 花園大の試合映像はこちら


リーグ戦・最終節 京大 vs 花園大学(京大 31−22 花園)
同上
リーグ戦最終戦を勝利で飾り、胴上げに舞う。
メンバー全員で記念写真



振り返り〜自分にとっての京大ラグビー部〜


リーグ戦の戦績は6勝3敗。目標のリーグ優勝には程遠く、リーグ戦中、自分の甘さを痛感しました。自分自身もっとできたのではないかという後悔はないと言えば嘘になります。しかし、勝ち負け以上に大切なことを京大ラグビー部に教えてもらった1年でした。「仲間のために」という気持ちがあれば、人は実力以上の力を発揮できるということを仲間から教わりました。学生生活の中で最も悩み、苦しんだ1年でしたが、全力を出し切っても負けたときの悔しさ、そして辛い練習を乗り越えて仲間ともに勝ちとった勝利の喜びを経験できたことは、人生の糧となり、私を人として大きく成長させてくれたと思います。

京大ラグビー部は学生主体のチームであるため、運営や戦術、練習の取り組みも大きく学生に委ねられます。「いかに強みを発揮し、いかに私学を倒すか」を考え、戦略的なラグビーを追求することが京大ラグビー部の伝統だと私は思います。常識に囚われず、常に新たな視点・手法を取り入れながら、変化し続けること。そして、自らを厳しく律し、直向きで愚直な体を張った京大ラグビーが継承されていくことを心から願っています。


定期戦 京大A vs 九州大A(京大 36−12 九大)


定期戦 京大B vs 九州大B(京大 36−12 九大)


定期戦 京大B vs 九州大B(京大 36−12 九大)

定期戦 京大A vs 東大A(京大 38−5 東大)


定期戦 京大B vs 東大B(京大 7−10 東大)




謝辞

京大ラグビー部に在籍した4年間、数えきられない程多くの方々に支えて頂きました。竹内組、北原組、飯島組という素晴らしい先輩方の元でラグビーができて本当に幸せでした。また、わがままばかりの自分について来てくれた同期のみんな、本当にありがとう。チームが一つに纏まれたのは、後輩からの信頼が厚かったみんなの人望とみんなの努力のお陰です。この代でラグビーできて本当に幸せでした。湯谷元監督、竹森元ヘッドコーチ、岡市元FWコーチ、下平元BKコーチには多大なサポートをして頂きました。シーズン中、1番苦しいときに何とか立て直すことのできたのは、当時の監督・コーチ団の皆様が支えて下さったお陰であり、精神的な支柱がなければこのように前向きに振り返ることのできる最終学年にはならなかったと思います。

最後になりましたが、京大ラグビー部のさらなる発展を心よりお祈り申し上げます。


(H21年卒・H20年度主将 森田 暢謙)


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