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088: 「居心地のよさが伝統の力だ」( H14・15卒 主将・副将座談会(H14 福本 匡志/H14 花田 智紀/H14 谷口 誠/H15 横山 修一郎)

"To The NEXT 100 Yrs" 次の100年へ。


OBから現役世代へ、さらには未来の京大ラガーに向けて幅広く未来を語り、繋ぐ。リレー対談形式のインタビューコンテンツです。


市口順亮監督(S39年卒)の下、定石にとらわれない戦術で躍進した平成半ばの年代。中心メンバーが当時を振り返った。


出席者:

福本匡志(H14卒、主将、HO)三菱UFJ銀行勤務

花田智紀(H14卒、副将、SO)物流・機械製造向けのベンチャーPhoxter勤務

横山修一郎(H15卒、主将、CTB)名古屋大で宇宙物理を研究

進行:

谷口誠(H14卒、FL)日本経済新聞記者



(谷口 誠)京大ラグビー部に入った経緯と、入った印象を


(横山修一郎)中高と茗渓学園でラグビーをやった。高校3年で花園の全国大会に出場し、燃え尽きた感があって大学では離れようかと思っていた。だが1年間の浪人中に、ラグビーをしたい欲が高まった。アメフトなどからも勧誘があったが、ラグビー部の練習を見に行って「いい雰囲気だなあ」と思い、早い段階で入部を決めた。多くが下宿ということもあり、部活だけでなく生活を一緒に過ごし、すぐに仲間として受け入れてもらった。

 きょう一緒の福本さん、花田には飯を食いに連れて行ってもらうなど、よくしてもらった。花田は大学では先輩だが、年齢は同じということもあり、「呼び捨てでいいよ」と言われて最初は「無理です」と答えていたが、夏ごろには「花田」と呼んでいた。


(花田智紀)茨木高でラグビーを始めた。当時京大は60人ぐらい部員がいて、軽い気持ちで入った。最初は「楽しそうにやってる」という印象だったが、1回生の後半ぐらい、ふだんは明るい「パリピ」な人が多かった4回生らがリーグ戦で熱く戦っているのを見て、のめり込んだ。




(福本匡志)天王寺高でラグビー部だった。大学で特にやろうと強く思っていたわけではないが、高校の先輩が何人かいて、その流れで入った。高校時代は鬼気迫る感じでやらされていたから、大学は最初、緩くやっているイメージを持った。でも上下関係は厳しくないし、フランクな組織で、いわゆる体育会的な雰囲気はない。横山が花田と呼ぶのはその象徴だろう。部活以外では、面白かったらいい、という感じがあった。


(谷口)1回生の春の間は「お客さんだから」と荷物持ちなどの雑用をせずに済んだ。当時としては珍しかったと思う。部の雰囲気はどうだったか。


(福本)自分たちが2回生の時、吉田学主将(H12卒)の代が一番、組織として統制が取れていたように思う。吉田さんはまじめな人だし、みんながついていく。戦力も整っていた気がする。

1回生の時は、チーム内でコンバートが多かった。今となったらチーム事情だと分かるが、当時は全体を見えていなかったので、コンバートされた人や周りは忸怩たる思いを抱えながらやっていたのかもしれない。


(横山)僕たちも4回生の時に大きくポジションが変わった。市口さんはポジション関係なく、オールラウンドの選手を求めていた。同期の中村兆はセンターからNo.8に移った。その時、兆自身はもちろん、FWで頑張っていた選手がどんな思いをしているのか、というのはよく考えた。市口さんとも、またチーム内でもよく話し合った。



(谷口)市口さんの印象は


▼市口世代対談「市口流人材起用」動画はこちら


(福本)最初は、わけがわからなかった。ラグビーは陣取りゲーム、最短距離でゴールラインに向かっていくというのが自分にとっては常識だった。入部した最初のころに、走るスピードやパスの速さなどを三角関数で示したプリントを渡された。しかもそれが間違っていた気がする。斜めに走ってもいいとか、既成概念を取り払い、ラグビーはなんでもありだと視野が広がった。


(花田)横に流れながらパスを投げる練習はびっくりした。それまでの知識からかけ離れていた。それがどう生きるのか半信半疑だった。FWもスピンパスの練習をした。それが後の方に生きてきて、市口さんはすごいなと思った。


(横山)すぐ隣にいる選手にスピンパスして、取れないなんてこともあった。


(谷口)SHの横走りは市口さんがお気に入りだった。グラウンドの真ん中に立って、端にいる選手にパスする練習があった。届かせようと思ったら流れるしかない。20~30メートルはあったか。タックルされたときに体をターンさせて相手の力をそらす「回転」という練習もあった。2015年W杯で山田章仁選手がサモア戦でトライを奪った技術だが、あんな練習をしているチームはなかっただろう。


(福本)縦に長いモールを組んだこともあった。力を1点に集中したらよい、という理論だった。ただ、コントロールが難しく、一番後ろが曲がってしまうこともあった。

「折り返し」という戦術は、端から端までボールを回す。フロントローはセットプレーでブレークしたらその場に残る。全員がスピンパスできないと成立しない。1回生の時に衝撃を受けた技術が、4回生の時の戦術の根幹になった。スピンパスができるメンバーがそろったから取った戦術なのか、先を見て準備した技術だったのか。いずれにしても、小さくて才能のない集団が戦うには理にかなっていた。でも、市口さんから「これをやれ」と押し付けられたことはない。気づきをもらって、自分たちで話し合いながらやっていた。


▼市口世代対談「市口流戦略と戦術」動画はこちら


(花田)自分たちの代は、一つ覚えのように回し、前が空いていてもブレイクできなかった。横山の代では、そこを突いて攻められるようになり、完成形だと思った。SH松永崇(H16卒)はしんどかっただろう。市口さんが「毎回ゲインしなくてもいい」と言ってくれたから気が楽にできた。


(横山)4回生の時はFB沢田明人(H15卒)、WTB岩津宇洸(H18卒)らが突破力があり、戦術が生きた。市口さんはアイデアがすごい人だなと思った。折り返しは、早稲田大のフラットなラインでのロングパスを参考にしたのかもしれない。早稲田はバックスが間隔を広く取っていたが、京大はその間にフォワードを入れていた。斬新だったから生きたのだろう。


(福本)相手もフロントがさぼって残っているが、器用な選手がいるとミスマッチが生じて突破できる。原形はプロップの菊地哲広(H12卒)だ。足が速く、ラインの大外に置いていた。


(花田)Aリーグでやるのは無理だと思うが、Bリーグで特色を出して戦うには有効だった。ずっとやり続けるのは難しいだろう。ただ、実現するには何年間かの積み重ねが必要だ。

面白いな、という選手をどう生かすかを、市口さんはよく考えていた。鈴木啓太(H15卒)は高校時代は柔道部で、ムキムキだがパスもできないぐらい。その長所をLOとして生かし、堀内哲(H15卒)とともに未経験ながらスクラムの安定に寄与し、戦力になった。



(谷口)京大ラグビー部の特徴、チームカラーは何か。年代によって違う中での共通項は


▼市口世代対談「京大ラグビーの魅力」動画はこちら


(福本)人間関係の適度な緩さではないか。ラグビーをやるためだけには大学に入っていない。入試という関門を経て、あえてラグビー部に入るという選択をしている。組織に居心地の良さを感じているからこそ、居続けているのでは。経験者でも初心者でも、誰でも自分の居場所を見つけられる組織が続いているのだと思う。



(花田)初心者で入ってレギュラーになれなかった人でも、「入ってよかった」と言ってくれる。試合に出る、勝つ、だけが目標でなく、ラグビーを通して得るものがあるのがよい。


(横山)戦術は毎年変わるが、みんながラグビーのことを考えている。朝から晩まで部員同士でつきあい、麻雀しててもラグビーの話をしていた。少ない部員が意思疎通して考えるのが大事だろう。


(谷口)花見、新歓のビラ配り、ダンスパーティーなどいろんな行事があって意思疎通を図っていた。今でいうチームビルディングの役割もあったのだろう。人生に生きている点、京大ラグビー部でよかったと思う点はどこか。





(横山)横だけでなく、縦にも長いつながりができた。市口さんとは出張のたびに飲みに行く。城田育士さん(S33卒)も友達みたいにしゃべれる。居心地の良さがあったからこそだろう。仕事の上でもつながりは生きてくる。研究職なので関係ないかと思ったが、顔が広がって本当に京大ラグビー部でやってよかったと思える。



(花田)組織を運営して何かを成し遂げるうえで、いろんなバックグラウンドや思いがある人たちを同じベクトルに向ける必要があるが、その時に経験が役立つ。うまく行かない組織は、意見の合わない人を排除する傾向がある。ラグビー部でも意見の食い違いはあったが、価値観を理解し合うことを学んだ。



(福本)集団の中で自分の居場所を探す、どう振る舞うかを大学時代からやってきた。社会に出てラグビーとは違う世界でも役立っており、いい経験をさせてもらった。そんなに密に連絡を取り合っているわけではないだろうが、精神的な支えになっているし、よりどころになっている。



2022年4月17日、Zoomで収録


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トピックス/京大ラグビー部創部百周年記念 シンポジウム開催及びウェビナーのご案内


来る2022年7月10日(日)13時より、創部百周年を記念してシンポジウムを開催いたします。無料のウェビナーをご用意しておりますので、ぜひご参加ください。

〜シンポジウムテーマ〜

「学生スポーツとしてのラグビーが目指すべき将来像」


日時:2022年7月10日(日)13:00〜 ​場所:京都大学時計台記念ホール ​無料ウェビナー同時開催




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