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100: 日本最古級のラグビー定期戦映像発掘・昭和3年12月28日の京大・東大定期戦

更新日:5月30日

思いがけない貴重な定期戦映像の第二弾が発掘された。京大ラグビー部が全国3連覇していたころ、1928年(昭和3年)12月28日の京大―東大戦を記録した16ミリフィルムである。早稲田大学応援部OBで、戦前の学生スポーツの資料収集・研究をしている笹山俊彦さんより提供いただいた。撮影者は不明だが、先の昭和4年元旦の慶應戦と同様に国内最古級の映像だ。


映像提供:笹山俊彦




8分間の映像の前半約4分は定期戦のB戦、後半約4分で定期戦のA戦が記録されている。古びて文字も消えかかったフィルムケースには東大LB-京大DB、東大ー京大と表記されていた。双方のBチームは、それぞれのスクールカラーである東大Light Blueと京大Dark Blueのチームと呼ばれていたことがわかる。


動画前半の京大DB 対東大LBの試合(映像より抜粋)




〜京大ラグビー部60年史より〜


昭和3年度


 昭和2年度のシーズンを全勝で終わったあと、馬場武夫は「京大ラグビーのいわゆる黄金時代は昨年のシーズンに来ていたのでした。ところが、不幸にも先帝の崩御によってすべてのスケジュールは取り消されました。しかも昨年の学年の変わり目には望月、内藤、中出、厳の四超弩級を送り出しました。一般の人達は『あの4人が出ては京大もだめだ』と思われたようです。しかし、部内の者はそれほど落胆しませんでした。前記の四君と入れ違いに進藤、上田、位田、青木の諸君がはいって来たからです。『京大も超弩級を失ったが、外の学校も失っている。そこへ吾々のところへこれだけの補充があった。補充としては勿体ない程の傑物ぞろいだ。今年こそ勝って見せるぞ』これが星名主将以下期せずして起こった想念でした。......今度は星名主将をはじめ合田、小西、戸尾(現姓石橋)のやはり四超弩級が卒業します。あとへどんな選手が来るやらアテもありません。けれども残る11人のものにも人並の覚悟はあります。勝敗は別として、先人が刻苦精励、打ちたてていった貴重なる金字塔にムザムザと汚泥を塗るようなことはしない決心でおります」と、次期シーズンに臨む決意を語っている。

 この昭和3年度も、全国制覇して、京大の黄金時代が続くことになる。強力なFW、俊敏なバックスは健在であった。しかし、昭和3年度のシーズン入りしてから、出足は余り快調ではなかった。10月21日の対関大、対姫高の二試合(京大グラウンド)は、 27-0、25-6のスコアで順当に勝ったものの、12月1日東遊園地で行われた神戸外人チームとの第1回戦は、3-5の僅差で敗れてしまった。



同志社の火災で定期戦中止


 京大は体制を立て直して、12月15日、神戸外人との第二回戦を同じ東遊園地で行い、こんどは11-8で快勝した。降りみ降らずみの雨で、神戸外人の重量FWに有利であったが、京大FWはよくこれに対抗、「京大の走力とチーム力が外人チームの重量と個人プレーに優った試合」と評されている。

 このあと、12月19日、三高と京大グラウンドでこのシーズン4度目の対戦。ウイングの進藤、馬場がCTBを務めるなど、メンバーを落としたため苦しい展開となり、ようやく3-3と引き分けて、西下してくる関東諸チームを迎えることになる。

 同志社との定期戦は、11月23日同大学内で起きた火災事故により同志社が年内の部活動休止の自粛措置をとったため、中止された。 京大は同志社戦なくして関西の覇者として扱われた。



関東は“王者慶応"が復活


 関東の情勢は“王者慶応"が復活した。明、早、立、東、法の各大学に全勝して、面目を回復している。特筆すべきは前年上海へ遠征して力をつけた明大の躍進で、早稲田を11-3で破り、対慶応戦でも、後半あわやというところまで追い詰め、結局13-11で惜敗したものの、前年の引き分けといい、その力は高く評価された。また立教も、東大を破って、力をつけてきていた。

 前年慶応を破って名をあげた早稲田は、2年連続して東大に敗れる

などあまり振わず、五大学間の成績では、全勝慶応の1位に続いて一敗の明治が2位。早、東、立がともに三敗一勝で3位に並ぶ成績であった。1位の慶応には、2月に来日した最初の英国チーム、英国上海防備軍寄贈のトロフィーが贈られている。



東大には1ゴール差の辛勝


 京大の東西大学対抗戦の第一戦は、12月28日京大グラウンド

で行われた対東大戦である。大方の予想は20点くらいの差で京大の楽勝ということであったが、東大が善戦して8-3(3-0、5-3)の1ゴール差で京大が辛勝した。別所安次郎はその観戦記(アサヒ・スポーツ)で「東大の目覚しき健闘に終始した。ファインプレーも東大に多かった。東大の精神力に教えられるところ誠に多かった」と記しているが、同観戦記およびその他の新聞から試合の経過を追うと次のとおりである。



◇前半 京大の俊足バックスに対する東大強引のFWの対戦。東大FWの猛烈な当たりと巧みなプッシュ、殊にバックローの出足早のつぶしは京大FWを呆然たらしめ京大は気をのまれた形。ようやく7分、中央南ラインアウトの球が阿部、檀、宇野と渡り、宇野、一人抜いて山本にパス。トライと思われたが、東大はWTB角田の好タックルで危機を救う。20分、中央ルーズから位田のタイミングよいヒールアウトをSH阿部、東大バックローに攻撃されながら檀にパス、檀よくつかんで強引に突っ込みゴールポスト直下にトライ、ゴール成らず。


◇後半 京大がパスで進めば東大はキックとドリブルで攻め、中央をはさんで白熱戦を演じたが、東大はバックの好蹴とFWのドリブルで京大ゴール前に殺到、17分、東大木村がルーズから洩れた球を拾ってWTB三原にパス、三原は京大の虚をついて、京大インゴールにハイパント、これを桜井ダッシュしておさえトライ、同点。その後の数分間東大の攻撃は実に当日の白眉で、京大もタジタジの態であったが、トライに結びつかなかった。3分、京大PKを得たが、ゴール成らず、ドロップアウトからルーズとなり、球は京大に出て、阿部、檀と渡り、檀よく東大バックスを抜いて宇野にパス、宇野30ヤード走ってトライ、ゴール成る。その後中央線で接戦を続けるうちタイムアップ。

 勝敗の差は「洗練された京大バックスが捕うべき機会をよく捕えたもの」と書かれている。


動画後半、京大A 対東大Aの試合(映像より抜粋)






【配信100回達成】


京都大学ラグビー部100周年特設サイトの記事配信は、今回で100回に達しました。これまでのご支援、ご協力に心から感謝いたします。オックスフォード大学との交流をはじめ100周年記念事業はさらに続き、サイトの配信も継続します。ただこれまでは週1回の配信でしたが、今後は不定期とします。一連の行事が終了したのち、サイトの記事をもとに記念誌を発行する予定です。どうぞこれからも、現役プレーヤーの活動とともに注目と応援をお願いいたします。





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